佐藤勝彦教授による著書「宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった」の読書感想です。
学んだこと
宇宙の「宇」は時間で、「宙」は空間。
宇宙は「無」からトンネル効果により、ポロリと生まれた。ここに有限の時間と空間が生まれたことになる。空間は有限だが、果ては無い。
最初生まれた宇宙は、素粒子のように小さかった。それがインフレーションという大規模な相転移により、100桁以上も大きくなった。
インフレーションは一瞬のうちに、いや、一瞬よりももっともっと短い間に起こったものである。
最初生まれた宇宙には1つの力しかなかった。相転移が進むにつれ、4つの力に分かれた。重力、電磁気力、強い力、弱い力だ。
4つの力を1つの力に戻す理論が、研究者、科学者によって進められている。電磁気力と弱い力の「統一理論」はすでに成立しているようだ。
最初の宇宙(親宇宙)が相転移を起こしているとき、水がお湯に相転移するときのようにボコボコと泡ができた。この泡から子宇宙が生まれている。
親宇宙と子宇宙は「事象の地平」で分離されている。行ったり来たりできない。
子宇宙から孫宇宙が生まれ、さらに曾孫宇宙、曾々孫宇宙・・・とつながっていく。
1つの親宇宙(もともとは素粒子ほど小さかった!)だけでも果てしなく宇宙は広がっている。それなのに親宇宙は1つではない。トンネル効果で「無」から生まれる親宇宙はほかにもあるはずなのだ。
感想
本書を読んで、この世が「ある」ことの不思議を昔よく感じていたことを思い出した。小学生くらいのときである。
この世は「いつからある」のだろうという時間の不思議も感じていた。
この世界には始まりがあるのだろうか?あるとしたら、その始まりの1秒前はどういう状態なのだろう?
神様が世界をつくり、時間を動かしはじめたのだろうか。
じゃあ、その神様は誰が「つくった」の?
神様は「いつ」生まれたの?
神様が生まれる「前」はどういう状態だったの?
そう考えると、もやもやする。不思議すぎて、畏敬を感じる。理解ができないのだ。
そうした不思議な思いに、本書は少しの回答を与えてくれた。「無」から、ポツンと「有」が生まれ、そこから時間と空間ははじまったのだ。
「無」というものの理解は、まだ難しいところであり、不思議を感じるのだが、それでも以前のもやもやは若干解消された。
しかしどうしたものか。宇宙とはとんでもないものだ。恐ろしく大きいのに、その解明はミクロの世界からスタートしているとは。
いまや宇宙は、あまりに大きすぎる存在となった。果てしない空間と時間の中で、わたしたちの地球では生命が誕生し、人間が生まれたのは、ほんのわずか前である。その人間として、知的生命体として私はここにいる。
しかもこの豊かな時代に、である。大いなる時間と空間の中で、奇跡という言葉でも足りないくらいの確率で、いまここにいるのだと思う。
これはどれだけ幸運なことだろう。そう感じることができたことも、本書を読んだ大きなメリットだ。
後日談(後輩とのやりとり)
職場の後輩と出張中に、「先輩は宇宙人っていると思いますか?」という質問を受けた。まあ雑談だ。
「宇宙って、僕たちだけの宇宙じゃないらしいよ。限りなく大きい。だから地球と同じような条件がそろっている空間はどこかにあるだろうから、僕たちと同じような知的生命体は、たぶんいるだろうね。」と回答しておいた。
ついでに、宇宙がどうやって生まれたのか。素粒子のように小さな宇宙がトンネル効果により「無」からコロリと生まれ、インフレーションで膨張し、その過程で親宇宙から子宇宙や孫宇宙が生まれたこと、しかも親宇宙も1つではないという、本書の内容を披露した。
後輩は私の話に興味を持ち、本書「宇宙はわれわれだけの宇宙だけではなかった」を後日貸してあげることに。
本書が多くのひとにとって興味深い内容であることは、間違いないでしょう。
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