【読書感想】利己的な遺伝子(生物学)

リベラルアーツ

リチャード・ドーキンスによる著書「利己的な遺伝子」の読書感想です。

(本書の内容)

「遺伝子の利己性」という観点から、生物の行動を解き明かす本

書籍紹介

著者:リチャード・ドーキンス

読書感想

「衝撃」「納得」「希望」の観点から感想を書いています。

書籍の内容にも触れていますが、かなり個人的な解釈を加えています。あくまで個人の読書感想となりますので、その点ご留意ください。

衝撃

「あらゆる動物は遺伝子によって創り出された機械にほかならない」

「遺伝子は非常な利己主義である」

本書は、こうした衝撃の内容からはじまります。

著者によれば、私たち人間(動物)は遺伝子の「乗り物」であるらしい。

私たちは自分自身こそが「1個の生命をもつ個体」と思っている。しかし遺伝子こそが生命の単位であり、私たちは無数の遺伝子(生命)が寄り集まってできた複合体なのだ。

なな太郎
なな太郎

え? 僕って遺伝子が寄り集まった存在でしかないの?

これは大きな衝撃だ。パラダイムシフト!

だが遺伝子をめぐるストーリーには納得感もある。

この地球にはかつて生命は存在しなかった。だがある日、自分自身のコピーをつくる分子が誕生した。遺伝子だ。

遺伝子は自分自身のコピーをつくることを最大化できるように利己的にふるまっている。利他的な遺伝子などいない。いたとしても、その遺伝子は自然淘汰により消え去る運命にある。遺伝子は利己的であることが正義なのだ。

利己的な遺伝子はやがて、細胞という乗り物を発明した。細胞が寄り集まり、遺伝子はさらに動物という乗り物を誕生させた。

ある遺伝子は恐竜に乗り込み、別の遺伝子はハチやアリに乗り込んだ。そして人間にも。

人間を乗り物にした利己的な遺伝子が、私たちを設計し、行動をプログラムしている。人間の示す行動は、利己的な遺伝子の振る舞いなのだ。

納得

本書で著者は、人間の示す行動を利己的な遺伝子の観点から解説している。ここでは印象に残った「雄と雌の争い」について触れたい。

①なぜ男性は浮気するのか。子育てを放棄するのか。

  • 男性も女性も、どちらも自分の子供をできるだけ多くつくり、成人まで育つように子育てしている。(利己的な遺伝子は、できるだけ多くのコピーを次代につなごうとしている。)
  • しかし子をつくるコストは男女で大きく異なる。女性は高コストで、男性は低コストである。(女性は生涯で産むことのできる子どもの数に限りがあるが、男性は理論上は膨大な子どもの親になることができる)
  • 男性は、夫婦関係や子どもを大切にするが、次の子どもをつくるチャンスがあれば、そのチャンスを生かそうとする。子育てという大きなコストを妻ひとりに背負わようとしている。(だから女性は集団で対抗措置をとる。女性はみんなで男性の浮気を「嫌悪」し、浮気をした男性を許さない。)
なな太郎
なな太郎

芸能人とかが浮気すると、ものすごくバッシングされますよね。社会はますます浮気を許さない風潮になってきていると思う。女性の対抗措置の勝利!

②なぜ女性はイケメンが好きなのか

  • 「好ましい特徴」を持つ男性は、ほとんどの女性にとって魅力的
  • 魅力的な男性との間に子ども(息子)をつくった女性は、自分の遺伝子を一気に増やせる(大勢の子孫を残す)チャンスがある。
  • なぜなら息子は、父譲りの「好ましい特徴」を備えている可能性が高く、多くの女性から支持されるから。多くの女性から支持される息子は、多くの女性との間に子孫を残してくれると期待できる。
  • 男性の「好ましい特徴」とは、端的に、性的魅力そのものである。つまりイケメン!(男性の好ましい特徴は、「知性」とか「誠実さ」とか、他にもいろいろあるはずなのに・・・)
なな太郎
なな太郎

イケメンが女性を総取りするのは仕方がないことのようです。

一夫一妻制でよかった・・・。

希望

私たちは遺伝子の乗り物でしかない。遺伝子は利己的である。(だから遺伝子に操られている私たちも利己的な存在?)

こう考えてしまうと少し暗い気持ちになってしまう。しかし気分を暗くする必要はない。本書では次のようなことも触れられている。

  • 脳は遺伝子の独裁にそむくチカラを持っている。
    • 遺伝子は不慮の出来事に対応するために私たち人間をあらかじめプログラムするが、日々の意思決定をするのは私たちの意思(脳)である。
    • 意志(脳)は遺伝子のプログラムをも超えて、方針決定するチカラをもっている。

私たちは遺伝子の乗り物でしかない、これは本当のことなのかもしれない。遺伝子が集合して、脳や体をつくり、神経細胞が「私」という存在を錯覚させているだけなのかもしれない。

でも今日も明日も、一生懸命生きていくのは、やっぱり「私」だ。

普通に生きていくうえでは、「私は遺伝子の乗り物なんだ」とは考えなくていいと思う。

利己的な遺伝子は自分の中に住んでいる「小さな住民」と思えばいい。

何か悪いことやズルいこと、あまりにも利己的で自分勝手なことが頭に浮かんだときには、「おや、これは利己的な遺伝子の作用かな?よし、遺伝子の思惑とは別の行動をとってやろうか!」と考えることができる。これは本書を読んだ大きな価値だと思う。

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